自分にとっての「心のふるさと」を、プロのクリエーターが小冊子などにまとめる活動「わたしのマチオモイ帖(ちょう)」が10周年を迎えた。記念の展示会が、東京・六本木の東京ミッドタウン・デザインハブで開かれている。無料。27日まで。
展示されているのは、小冊子や映像作品、絵はがきなど約2千点。不安定な時代にあって、自分を形作った人々や暮らしを見つめ直す機会にしてほしい、との願いも込められている。
マチオモイ帖の第1号は、大阪市のコピーライター、村上美香さん(55)が2011年4月、故郷の広島県・因島の重井町に暮らす人たちにあてて作った「しげい帖」。農家で生まれ育ったものの、継がずに都会で仕事をする中で、「島の人と記憶の交換日記ができないか」と考えたのがきっかけだ。両親の言葉や島の写真、重井町にまつわるクイズなどで構成し、1千部を刷って島で配った。「家族のアルバムより少しパブリックな、半径3キロぐらいの記録を文章にとどめた感じ」
震災、コロナ禍……「故郷を思う気持ち強く保てた」
東日本大震災で多くの人が瞬時に故郷を失い、「ふるさとはいつまでもあるわけじゃない」とわかったことも、背中を押した。
しげい帖を見たグラフィックデザイナー、清水柾行さん(60)が「面白い。色んな地域のクリエーターを巻き込んで、それぞれのマチオモイ帖が作れるのでは?」と提案。仕事仲間に声をかけ、まず大阪で34冊を制作。12年2月には全国から340冊を集め、東京で展覧会を開いた。
デザイン系の専門学校生らにも呼びかけ、10年間、コンスタントに冊数を増やした。冊子のほかに絵はがきタイプもあり、ゆうちょ銀行のカレンダーに採用された。この2年半、コロナで人々は里帰りを控えた。そんな中でも、それぞれがマチオモイ帖を読み返し、「故郷を思う気持ちを強く保てた」と村上さん。
10周年を記念し、ふるさとへの思いが詰まった言葉150編を村上さんが各地のマチオモイ帖から選び、「詩編」としてまとめた。
「かまぼこの よかにおいが…
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル